野生型N-ras遺伝子の組織特異的がん抑制効果とその機構


研究課題名 野生型N-ras遺伝子の組織特異的がん抑制効果とその機構
レコードタイプ 研究実績報告
報告年度 2005
研究期間 2003-2005
研究課題番号 15659068
研究代表者 高橋 智聡  (タカハシ チアキ) 京都大学・医学研究科・助教授
研究代表者番号 50283619
研究機関 京都大学 研究機関番号:14301
研究分担者 野田 亮  (ノダ マコト)  京都大学・医学研究科.  教授  (30146708)   
研究種目 萌芽研究 研究種目コード:401
研究分野[3] 医化学一般 研究分野コード:6905
キーワード がん / 転移 / Rb / Ras / Rho / マウス / 癌抑制遺伝子 / 癌遺伝子
研究概要 Rasプロト癌遺伝子は組織によって相反する作用を持つ。本研究では、Rbをホモ型欠損することによって生じる2種類のがん細胞においてN-ras遺伝子がどのような働きを持つのかを調べた。Rbをヘテロ型欠損したマウスは、Rb遺伝子のLOHにともない、下垂体腺がん(悪性)と甲状腺カルシトニン産生(C)細胞腺腫(良性)を発症する。Rbヘテロ型欠損に加えN-rasをホモ型欠損させたマウスでは、下垂体腺がんの分化傾向が進み、浸潤性が抑制された。対照的に、C細胞からは極めて転移性の高い甲状腺髄様がんが発生した。また、N-rasがヘテロ型になっているとき、このマウスに生じたC細胞腫の36%でN-rasのLOHとそれに伴う腫瘍の悪性転換を観察した。RbN-ras両欠損C細胞がん株では細胞運動を制御するRhoAの活性が亢進したが、野生型N-rasの導入によってこの活性を抑制できることがわかった。面白いことに、同コピー数の活性化型N-rasは反対にRhoAの活性をさらに亢進させた。ヒトの肺癌あるいはマウスに実験的につくらせた皮膚癌、肺癌などで、活性化型の突然変異をもったrasアレルの出現にだけではがんを発症せず、対立する正常アレルの欠損が腫瘍の発生に必須になる場合があることが知られる。つまり、野生型のrasアレルは正常型のそれに対して遺伝学的優性な働きを持つと解釈できる。RhoAの活性制御に関する相反的な作用は、このことのメカニズムの一端を担っていると思われる。最後に、このようなN-ras遺伝子の欠損がヒトの当該がんでも観察されるかどうかを調べた。ヒトの散発性甲状腺髄様がんでは、N-rasを含む染色体1番短腕領域のアレル数異常が効率に観察されることが報告されていた。我々はN-ras近傍のマイクロサテライトマーカーをもちいて、同上18症例を解析した。この結果、そのうちの10例でN-ras遺伝子のLOHを検出した。
発表文献 Ihara Mら:   "Cortical organization by the septin cytoskeleton is essential for structural and mechanical integrity of mammalian spermatozoa."  Developmental Cell 8.  343-352  (2005)  
Echizenya Mら:   "The membrane-anchored MMP regulator RECK is targeted by myogenic factors."  Oncogene 24.  5850-5857  (2005)  
Takenaka Kら:   "Prognostic Significance of Reversion-Inducing Cysteine-Rich Protein With Kazal Motifs Expression in Resected Pathologic Stage IIIA N2 Non-Small-Cell Lung Cancer."  Ann Surg Oncol. 12.  817-824  (2005)  
Takahashi Cら:   "Nras loss induces metastatic conversion of Rb1-deficient neuroendocrine thyroid tumor"  Nature Genetics 38.  118-123  (2006)  


 

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