「個人の尊重」を解釈基準とすることによる、社会権諸条項の解釈の変革


研究課題名 「個人の尊重」を解釈基準とすることによる、社会権諸条項の解釈の変革
レコードタイプ 研究実績報告
報告年度 2005
研究期間 2004-2005
研究課題番号 16530021
研究代表者 押久保 倫夫  (オシクボ ミチオ) 東海大学・法学部・助教授
研究代表者番号 30279096
研究機関 東海大学 研究機関番号:32644
研究種目 基盤研究(C) 研究種目コード:320
審査区分 一般 区分コード:03
研究分野[3] 公法学 研究分野コード:3402
キーワード 個人の尊重 / 人間の尊厳 / 教育を受ける権利 / 人間像 / 個人の自律
研究概要 本年度は、日本国憲法の規定する社会権のうち、26条の「教育を受ける権利」について、人権の中核となる思想を表す憲法13条の「個人の尊重」を解釈基準として捉えなおす研究を行った。またその前提として、「個人の尊重」やその自律、あるいはそれと密接な関係を有するドイツ連邦共和国基本法1条の「人間の尊厳」について、これらに関する日本およびドイツの文献を研究し、その理解の進化を図った。その成果の一部が、これらに関係する論文である「人間像の転換?」、「無期限の保安拘禁の合憲性」及び「日本国憲法における実定規範としての『人間の尊厳』の位置づけ」である。
このうち「人間像の転換?」では、「個人の自律」について、これを憲法改正等により実定法の文言に取り込むことは、「自律した個人」が既に存在するかのような現実隠蔽的機能を帰結し、自律の前提条件を等閑視させるイデオロギーとなるがゆえに回避すべきことを説いた。また「無期限の保安拘禁の合憲性」の中では、期限のない保安拘禁は「人間の尊厳」に反しないというドイツ連邦憲法裁判所の判決を検討した。また「日本国憲法における実定規範としての『人間の尊厳』の位置づけ」では、あくまでも「個人の尊重」を中心とする人権体系を維持したまま、日本国憲法に「人間の尊厳」を実定法上取り入れる場合の、当該規範の根拠条文やその機能を明らかにしたものである。
そして、以上の「個人の尊重」及び「人間の尊厳」の研究で得られた知見を踏まえて、「教育を受ける権利」の新たな解釈を探求した。その結果、26条をめぐる最大の争点であるいわゆる「教育権」の問題においては、従来の「国家の教育権」や「国民の教育権」のみならず、この両者の対立図式を批判する「親の教育権」までも、学習権の主体が教育内容を自ら選ぶことができないことを当然の前提としていることに、「個人の尊重」の観点からして大きな問題があることを見出した。これは生存権解釈についての前年度の拙稿「生活保護と『個人の尊重』」で指摘した、25条の「最低限度の生活」に基づく人間像による生活保護受給者の自由の制限の問題と同様に、26条の文言に由来する人間像から生じていると見られる。
日本国憲法26条の解釈におけるこの問題点を克服する為には、原理的には学習権の主体が教育内容を選択できることを想定し、未成年等の場合例外として成長段階等に応じた選択権の代位を認めるという構造を採るべきだと考える。勿論現実には例外の方が主たる問題になるのだが、憲法13条の「個人の尊重」を解釈基準として貫徹させ、学習権の主体を常に視野に置く為には、このような原則を論理的に維持する必要がある。
以上の私見を、大学の紀要等の雑誌に論文として発表する予定である。
発表文献 押久保 倫夫:   "人間像の転換?"  憲法問題 16号.  13  (2005)  
押久保 倫夫:   "無期限の保安拘禁の合憲性"  自治研究 82巻2号.  11  (2006)  
押久保 倫夫:   "日本国憲法における実定規範としての「人間の尊厳」の位置づけ"  東海法学 35号.  30  (2006)  


 

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